雨の日の失敗

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「雨、止まないな」 「……そだな」  大輝の言葉に、織子が頷く。雨の日だろうと普段は賑やかな学校だが、今日は休日。部活動の声も遠くにあって、まるで世界から隔離されたよう。二人きりの生徒会室は広すぎて、隙間を埋めるには雨音は頼りない。 「最近、天気予報、よく外れるな」 「ニュースとか見ねぇ」 「見ておけ。そろそろ世界の情報を仕入れておかないと、困るぞ」  もっともな言葉に無言で返す。大輝は肩をすくめると自らの席に着いた。ペンが走り出す音を確認してから、ちらりと大輝に横目を向ける。  書類を見る目は、織子から見ると半分伏せられているように見える。時折ペンの音が止まって、長いまつげと綺麗な唇が何かを確認するように動く。その所作も含め、よどみない動き。一つの芸術のような大輝の姿は、雨を眺めているよりもずっと暇つぶしになる。
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