雨の日の失敗

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 見目がいいだけではない。彼の能力は文武に渡り高く、教師陣のみならず生徒からも好かれる好青年。天は二物を与えないと言うが、ならば彼は四、五物は与えられているのだろう、と万人に納得させるスペックの高さだ。  そんな人物が物事の中心に来ないはずがない。当然のように彼は、本来あり得ない一年生時点で生徒会長に就任し、休日に学校に来てまで何か作業をしているほどの勤勉ぶりを見せている。  ふと、彼が顔を上げた。 「ッ――」  慌てて目を窓に向ける。ばちりと合った視線に気付かれていないだろうか。抱えた膝をより強く抱き、顔が見えないようにとりつくろう。 「ところで、寒くないのか?」  大輝が発したのは心配の言葉だった。
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