4人が本棚に入れています
本棚に追加
ニュースを見ない、そう言った織子はネットの天気予報も見ていなかった。曇り空を見て「まあ大丈夫だろう」と楽観的に自転車に乗り、結果、学校に来るまでの間にずぶ濡れになってしまったのだ。きっと下着まで濡れてしまっているだろう。
「別に、平気だし」
強がってそう言うが、実際はかなり寒い。まだ夏の暑さが残る時期だが、雨が降れば気温は一気に下がる。冷たい隙間風が背筋を撫でる度に、体を震わせないようにするのに必死になっている。
「君のそういうところは、よくないな」
強がりだと見透かされていた。「うるせー」と返すも、なんだか、もやもやとして、眉を寄せる。この男は、やたらとこちらの心を見透かしてきて、その度に織子は心の中の突風をやり過ごすのに必死で。それなのに大輝は、何でもない事かのように遠くを見ている。
最初のコメントを投稿しよう!