雨の日の失敗

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「どうやら暖が必要なようだな」 「い、いいよ、このぐらい何ともないって!」 「そういう台詞はタオルの一枚でも持ってきてから言うんだな」 「大丈夫だって、ほら、俺頑丈だし!」  余計な手間が発生するのを恐れての言葉に、軽蔑するような眼差しが返される。 「いいから、素直に甘えていろ。用もないのに休日の学校に来て、風邪をひいて授業に出れないなんて、本末転倒だろう?」  強い言葉による正論にぐっと息をのむ。ぴしゃりと閉められた扉を開けてまで追いかけて止める勇気はなく、織子は再び窓の外に目をやった。  雨音が生徒会室に反響する。見える範囲の空は全て灰色で埋まっていて、雨が上がる気配は微塵もない。髪の先から時折滴る雫が、それを象徴しているかのようだった。
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