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織子の世界に大輝の存在が現れたのは、生徒会選挙も終わり、梅雨も目前に迫った五月終わりの事だった。昼休み、本格的に暑くなる前の今の内だけだと、人のいない屋上で弁当を食べていた織子は、突然の豪雨に見舞われたのだ。
青空が澄み渡った日だったのに、何故雨が降ってきたのか、ニュースどころか天気予報も確認しない織子には分からない。ゲリラ豪雨という単語は時折耳にするが、そのメカニズムを確認する気には未だになれない。
ともかく、濡れ鼠になった織子は慌てて校舎の中に戻ろうとした。それで、扉をくぐった瞬間にぶつかったのが、大輝だった。
慌てていた事もあって、織子の頭の中は真っ白になった。反射神経自体機能しなくなってしまったかのように、吐息一つ出す事も出来ない。織子は大輝の胸に顔をぶつけたまま、何も出来なかった。
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