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一方、大輝は実に冷静だった。まず織子の肩を掴んで身を離させ、数回の瞬きで状況を確認すると、自らのブレザーを織子に羽織らせたのだ。
「大丈夫かい?」
「えっ、あ、う、は、はいっ」
そんな変な返事しか出来なかった織子に対して、何ら悪意を感じさせない微笑みを向けたのを、覚えている。
その時は何でそんな事をしたのかという考えを浮かべる余裕さえなかったが、冷静になってから考えればすぐに理由が分かる。
暑がりな織子は五月に入ってからずっとブレザーを脱いで行動していた。そのため、雨に濡れたあの時、ブラウスが透けていて、大輝はそれを隠すためにブレザーを羽織らせたのだろう。
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