友田直樹

11/48
前へ
/555ページ
次へ
いい具合に酔いもまわってきた頃。 呆然と、心ここにあらずといった顔で綾がバスルームから出てきた。 一体どのくらい入ってたのかと時計を見ると、2時間近く経っていた。 逆上せたように赤く染まる顔とは逆に、心の奥底から青ざめたような顔。 地に足がついていないようにフラつく足取りは、湯あたりのせいではないだろう。 そして、広く開いたデザインの襟元から覗く真っ赤に腫れた擦過傷。 ゆっくりと近づく俺に、一瞬怯えたような顔をした綾。 無理もないと分かってはいても、ちょっと堪えた。 どこか冷めた思考の中、身体が酔っていて良かったと思う。 ツーッと赤く腫れあがった傷をなぞると、ビクンと動く身体。 どれだけ嫌な思いをさせたんだろうと、再び襲ってくる後悔。
/555ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2470人が本棚に入れています
本棚に追加