友田直樹

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「森嶋さんっ!」 叫んだ声は彼女の耳にも届いているはずなのに、一瞬たりとも止まらずにドアの向こうへと消えていった。 最後に見た彼女の悲しみに沈みきった瞳が瞼の裏側に焼き付いて離れない。 追いかけなくてはと頭より先に身体が動いた。 そんなこと、今までの自分になかった事だと、正直自分に驚いた。 どちらかといえば、いつも頭で熟考してから行動に移すタイプの人間だ。 自分なりに話の流れ、場の空気、相手の特性なんかを見極めて、一歩、二歩……いや、3歩先まで見越して事を進める。 物心ついた時から身についていた。 別に努力して得たわけじゃない。自然とそうなっていた。 我ながらかわいげのないガキだったと思う。
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