友田直樹

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どのタイミングだろうと必死で考える。 悪いけど、目の前の記者の質問にはテキトに答える。 面倒な質問には曖昧に笑って誤魔化す。 悪いね。 でも、今は綾に会いに行くことしか考えられないんだ そして、なんとか終えた午前の仕事。 今だ。 俺はこっそりとこの場から抜け出すことしか、考えてなかった。 だから、最後に記者が俺にしか聞こえないくらい小さな声で言い残した言葉を聞き流してしまったんだ。 のちに悔むことになるなんて知らずに。 ――――最愛の彼女は間もなくあなたの元に戻ってきますよ。そしたらウチに独占取材させてくださいね そして俺は逃げ出した。 なんとなく毎年恒例にしてる洋食屋での食事。 初めて書きあげた小説を書いた時の気持ちを忘れないようにするため。 とかく天狗になりがちな自分を戒めるため。
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