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送った先がすぐ隣の駅で良かった。
ここからの方が洋食店には近い。
駅前のチェーンコーヒーショップに入ってすぐ綾から連絡がきた。
待ってましたと心踊る所をグッと堪え、冷静な声を出す。
綾の話で竜は諦めて帰ったということが分かった。
だけど、綾の声に元気がない。
元気がないどころか、落ち混んでるようだ。
その原因を探す。
綾の口から漏れた竜を心配する言葉。
何だよ……
綾、お前どこまでも人がいいヤツなんだな。
そして、その心配した顔を竜に惜しげもなく見せてしまったんだろ?
そんな心配を俺がさせてるって分かってはいても、納得いかない。
とりあえず綾の不安を解消するために竜に電話を入れると伝えて綾を誘い出す。
電話を切ったあと、小さく舌打ちしてから竜へ電話をかけた。
「分かったよ。大丈夫。誤解は解くから。じゃあな。もう、邪魔するなよ」
竜の謝罪の言葉を遮って電話を切った。
ふと視線を上げると、十数歩先にじっと立つ綾の姿。
戸惑いが張り付いた顔。
無理もないだろ。竜のヤツがドラマチックに盛った里美の話を聞いた直後なんだから。
だけど綾、そんな、心配は無用なんだよ。
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