友田直樹

8/48
前へ
/555ページ
次へ
俺のけん制もどこ吹く風。 竜は真っ直ぐに綾に向かっていく。 焦る俺。 だけど、曲がった根性の俺は、素直に正面から勝負することなんかできなくて、泣く泣く竜に綾を預けた。 だけど、一秒だってお前から目を離さなかった。 突然綾が見えなくなって数分。 いつもあたってしまう俺の嫌な予感を、この時ほど外れて欲しいと思ったことはなかった。 気がつけば、身体が先に綾を探していた。 あのときの俺は、無我夢中すぎてまともな記憶が無い。 どうやって綾を探し出したのかは思い出せないけど、本能で探し当てた。 あの男の背中に隙間から、綾の白い腕が見えた時目の前が真っ暗になったのは覚えてる。 俺の中で、何かがはじける音がした。 自制する警鐘も無視して、きがつけば、素人を相手にするのはご法度なはずなのに、気がつけばヤツを数メートル先に吹っ飛ばしていた。
/555ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2470人が本棚に入れています
本棚に追加