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「ねぇ、先生。北京ダックって勿体無いよね?」
北京ダックを箸で摘みながら呟く台詞に「何の話だ?」と宮城が薄餅を詩織の皿に置いていく。
「だって、皮だけ食べて後は食べないって勿体無いでしょ?」
真顔でそういう彼女。
だから宮城は噴出すように笑って。
「はっ、お嬢様の台詞じゃねぇな」
「どうせお嬢様らしくないですよーだ!」
そう言って笑う宮城に詩織は唇を尖らせた。
「っつーかな、残りの肉は他の料理に使われてんの」
そんな真実を教えてもらい、
「あ、そうなんだ」
と顔を緩ませる詩織を見て、宮城はその笑みを柔らかいものに変えた。
「――っと、あれ?」
店員がいないから自分で巻かないといけない北京ダック。
だけど、いろんな具材を入れていくと巻くのもなかなか難しくてぽろりと具材が落ちてしまう。
「入れすぎ。貸してみろ」
すっと宮城の手が伸びてきて手際よく包まれていく薄餅。
「先生、器用だね」
「お前が不器用すぎるだけ」
だから詩織はまた唇を尖らせて。
「こんなの普段やらないもん!」
「だろうな」
即座に帰ってくる答えに詩織はさらに頬も膨らませた。
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