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「た、食べ過ぎたぁ」
椅子の背にもたれ天井に向かって息を吐く詩織を見て薄く笑う。
「じゃ、ラウンジには行かなくても――」
「行くっ!」
速攻で返ってくる声に宮城はすっかり呆れ顔。
「腹一杯、なんだよな?」
「でも行く! 動いたらきっと食べれるから!」
けれど、両手を握り締めてそう力説するから宮城は呆れながらも「はいはい」と笑って立ち上がった。
「中華ってデザートがイマイチだと思うのよね」
「ツバメの巣とか亀ゼリーとか女は泣いて喜ぶもんだと思ってたけど?」
「……それ、今までの経験?」
訝しげにそう言って隣を見上げれば、宮城の顔も不快そうに歪んで。
「一般論」
そんな回答に詩織は唇を尖らせる。
「まだ、そんなの必要なほど年取って無いもん」
「なるほど」
そう言って宮城がクスリと笑う。
さっきの時とは全く違うエレベーターの中。
「あ、でも杏仁豆腐は好き!」
「はいはい、で、今度は何食うつもり?」
弾む会話は気持ちがいいくらい。
そして開かれるエレベーターのドア。
目の前には外を見渡せる大きなガラス。
「ほら、ここのラウンジって気持ちいいでしょ?」
そんな詩織の声に、
「そうだな」
なんて声が後ろから聞こえてきた。
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