第6話

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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「た、食べ過ぎたぁ」 椅子の背にもたれ天井に向かって息を吐く詩織を見て薄く笑う。 「じゃ、ラウンジには行かなくても――」 「行くっ!」 速攻で返ってくる声に宮城はすっかり呆れ顔。 「腹一杯、なんだよな?」 「でも行く! 動いたらきっと食べれるから!」 けれど、両手を握り締めてそう力説するから宮城は呆れながらも「はいはい」と笑って立ち上がった。 「中華ってデザートがイマイチだと思うのよね」 「ツバメの巣とか亀ゼリーとか女は泣いて喜ぶもんだと思ってたけど?」 「……それ、今までの経験?」 訝しげにそう言って隣を見上げれば、宮城の顔も不快そうに歪んで。 「一般論」 そんな回答に詩織は唇を尖らせる。 「まだ、そんなの必要なほど年取って無いもん」 「なるほど」 そう言って宮城がクスリと笑う。 さっきの時とは全く違うエレベーターの中。 「あ、でも杏仁豆腐は好き!」 「はいはい、で、今度は何食うつもり?」 弾む会話は気持ちがいいくらい。 そして開かれるエレベーターのドア。 目の前には外を見渡せる大きなガラス。 「ほら、ここのラウンジって気持ちいいでしょ?」 そんな詩織の声に、 「そうだな」 なんて声が後ろから聞こえてきた。
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