第6話

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デザートには見た目の可愛いマカロンにジェラートを添えて。 「マカロンって見た目に騙されちゃダメだよね。カリッとしてて、でも中はしっとりで」 「お前は評論家か?」 「先生が食べないから教えてあげてるんです!」 べーっと突き出す舌に宮城はフッと笑ってブラックのコーヒーを口に運ぶ。 「お前、本当にお嬢様らしくないな」 そう言って笑う宮城先生の髪が日の光を浴びてキラキラと輝く。 光の陰影で浮き出しになる顔の造形。 よく見れば睫は長いし鼻もスーッと通ってる。 薄い唇に笑うと薄っすら浮かぶえくぼ。 瞳は向日葵のように中心向かうほど深いブラウンで―― 「なんだ?」 そんな言葉に見とれていることに気がついて。 「わ、悪かったですね、育ちが悪くてっ!」 慌てて言い返せば、宮城はまた笑ってコーヒーを啜った。 「いいんじゃね、それで」 「……はい?」 カチャリと置かれるコーヒーカップ。 ゆらりと揺れる液体が太陽の光を反射して詩織の目に刺さるから、思わず目を細めて。 「詩織らしくて」 初めて呼ばれる名前に違和感を感じるのに、言い返す言葉が見つからない。 だから焦る様にマカロンを一口で頬張れば、 「――んっ、うぐぅ」 「馬鹿っ、ほら水!」 渡されるグラスをもぎ取って、 「――はぁ、死ぬかと思った」 なんて感想に、 「――く、あははっ、馬鹿だろ? お前!」 「るさいなぁ!!」 静かなラウンジに二人の声が響き渡った。
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