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「お帰りなさいませ、詩織お嬢様」
いつもと同じように出迎える鈴花の声に「ただいま」と答えて家の中に。
少しだけガレージのほうへ視線をやるが、そこ車は無くて詩織はホッと息をついた。
「どうでした? パーティーは」
「えっ? あ、うん、素敵だったよ」
いきなり声を掛けられ詩織は適当に言葉を繋ぐ。
パーティーの内容なんてまるで覚えてない。
どんな内容で料理はどうだったとか、
恭がどうしてたか、なんて。
「夕食はいかがしましょう? 今日は旦那様がいらっしゃいませんのでお嬢様のお好きなものをご用意しますけど」
そういわれても、今は食べ物のことを思い出すだけで――
「い、いらない。なんか食べ過ぎちゃって」
「まぁ、そんなに美味しい料理だったのですね」
笑う鈴花に「違う」とも言えなくて、詩織は「う、うん」と歯切れ悪く返し自分の部屋に向かった。
髪を開放して、窮屈なパンプスを放り投げて、タイトなドレスを脱ぎ捨てる。
それからシャワーを浴びて――
「なん、だったんだろう」
今日一日、本当に何をしたんだろう?
祝いたくも無いパーティー。
そして宮城先生と『桜塚』のこと。
「疲れたなぁ」
詩織はシャワーに打たれそう呟いた。
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