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考えを巡らせる詩織に恭はスッと視線を逸らしベッドから立ち上がった。
「知ってたよ、理事長の妾腹だって」
部屋に響く恭の声に詩織は背筋に冷たいものすら感じる。
「しょう、ふく?」
その言葉を意味も分からず恐る恐る繰り返す。
すると恭が小さく息を吐く音が聞こえて――。
「妾の子って意味」
突然聞かされる聴きなれない言葉。
そんな言葉が恭の口から発せられるなんて――。
「そ、そんな言い方しなくたって!」
「他にいいようがない」
叫ぶような声に恭のサラリとした声が重なる。
「どういう風に言葉を飾っても、彼が『外』に出来た子だという事実は変えようが無いんだよ」
「……恭、ひどいよ」
その口調はとても優しいのに、
恭の声はこんなに冷たかっただろうか?
もっと暖かくて、優しくて――。
いつからこんな風になったんだろう?
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