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『宮城先生が好きなの?』
なんでこんなこと聞いたんだろう?
あんまりいきなりで『違う』っていえなかったことを後悔するけど、後になって聞くのも変な気がして、触れることなく食べたアップルパイ。
『出来ればシオには聞かれたくなかった』
その言葉の意味も知りたかったけど、結局聞くことは出来なくて迎えた日曜日。
広間のソファに座ってクッションを抱きしめて天井を見上げて――。
「シオ、テニスしようか?」
いきなり見える恭の顔に驚いて、
「はっ? えっ? テ、テニ?」
「そう、テニス」
何も無かったかのように、いつもと変わらない笑顔。
「や、えっと、いいよっ! 今から映画でも――」
慌ててそう答えれば、綺麗な瞳が細められため息が落ちてきた。
「昨日食べ過ぎたんでしょ? 夜はアップルパイに我儘言ってバニラまで添えて食べてたよね?」
「焼きたてアップルパイには必需品だもん」
手をリモコンに伸ばして、唇を尖らせながらいいわけを。
「その脂肪が全部おなかについちゃうよ?」
「――なっ!?」
驚いて顔を上げれば、その隙にリモコンは奪われて、目の前にはラケットを2つもってにっこり笑う恭の顔。
「ほら、一人じゃテニスって出来ないから」
「……」
押し黙っていると、庭から番犬ケインの鳴き声が。
「ケインも準備万端だって、ね?」
結局、恭の笑顔に「NO」とは言えず、
「……着替えてくる」
そういい残して詩織は部屋に着替えに行った。
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