406人が本棚に入れています
本棚に追加
大河内家の敷地には勿論テニスコートもある。
そこから聞こえてくるのは、弾むボールの音。
ワオン! と低い犬の声、
それに、
「ほら、シオ! ボール拾って!」
そんな恭の声も虚しく、ポーンと飛んでいったボールはケインがキャッチ。
「バックでも打てるようにしなきゃね、シオ」
「テニスプレイヤーなんて目指してないもん!」
「たしなみとして、だよ」
そして、また打たれる黄色いボール。
ちゃんと打ちやすいところに打ってくれて――
「きゃあ!」
跳ねた瞬間に右に曲がっていくボール。
それがわざとだって分かるから――、
「もうっ! 恭!!」
「あははっ、ケイン! Bring it!」
恭の声にケインが「ウォン!」と尻尾を振って答える。
もうすぐ冬を迎えるというのに、太陽は暖かな日差しを落とし、
その下ではケインが尻尾を振って走り回る。
「ケイン、Come! 今度はあたしからだからね!!」
二人の間で「キュン?」と首を傾けるケインを見て、二人で笑った。
そんな日曜日。
最初のコメントを投稿しよう!