第6話

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大河内家の敷地には勿論テニスコートもある。 そこから聞こえてくるのは、弾むボールの音。 ワオン! と低い犬の声、 それに、 「ほら、シオ! ボール拾って!」 そんな恭の声も虚しく、ポーンと飛んでいったボールはケインがキャッチ。 「バックでも打てるようにしなきゃね、シオ」 「テニスプレイヤーなんて目指してないもん!」 「たしなみとして、だよ」 そして、また打たれる黄色いボール。 ちゃんと打ちやすいところに打ってくれて―― 「きゃあ!」 跳ねた瞬間に右に曲がっていくボール。 それがわざとだって分かるから――、 「もうっ! 恭!!」 「あははっ、ケイン! Bring it!」 恭の声にケインが「ウォン!」と尻尾を振って答える。 もうすぐ冬を迎えるというのに、太陽は暖かな日差しを落とし、 その下ではケインが尻尾を振って走り回る。 「ケイン、Come! 今度はあたしからだからね!!」 二人の間で「キュン?」と首を傾けるケインを見て、二人で笑った。 そんな日曜日。
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