第6話

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「願書出したのか?」 柊の声に恭は「うん」と頷いて薄く笑う。 ざわつく教室。 12月にもなれば3年生の教室は、受験組は血眼になって参考書を開き、推薦・エスカレーター組は安穏とした日々を過ごす。 「先生どもが騒いでたぞ? お前ならうちじゃなくてもっと上が狙えるのにって」 「柊だって。東海大の推薦枠蹴ったんだって?」 そう言われて柊も「まあな」と肩をすくめた。 「親の後を歩くのはつまんねぇからな」 「そんな柊が好きだよ」 簡単にそんな台詞を言ってのけるから―― 「……勘違すんだろうが」 「柊ならいいよ」 「お前なぁ」 「とりあえず、コーヒーでも奢ってくれたら」 なんて台詞をニッコリ笑って口にする恭。 だから、 「なんかムカつくっ」 そう言いながら柊は恭の脛を軽く蹴って「いくぞ」と歩き始めた。
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