第6話

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「で、学部は?」 柊の声に少し間を置いて「経済」と短く返しカップに口をつける。 カップの中からはブルマンの香ばしい香り。 「ふーん、ってことはやっぱりお前が後継ぐのか?」 その声には「どうかな」と答えて小さく息を吐いた。 「経済を選んだのは役に立つと思っただけで深い意味は無いよ」 そう言って恭は「柊は?」と視線を柊に向けた。 「ん? あぁ、俺は工学部」 「工学部?」 予想外の学部名に恭は驚いて顔を上げた。 「一体何する気?」 そんな恭のセリフに柊はニヤリと笑う。 「内部推薦受けて大学が決まったら今度は車の免許も取ろうと思ってる」 「そう言えば、夏にはバイクの免許取ってたね」 思い出したような恭のセリフに柊は小さく頷いた。 「昔っから好きだったけど、やっぱ自分で機械いじったりって楽しいなって思えてさ」 カップから立ちこめる湯気の中、そう語る柊に恭は目を細めた。
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