第6話

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校内にあるカフェは部活が始まるまでの時間しか開いてない。 そうなると必然的に――。 「お前ら、絶対勘違いしてるよな?」 ここは数学準備室。 「だって、カフェ閉まってるんだもの」 美紀は涼しい顔で紅茶をすすり、その向かいで詩織もカップ片手にコクコクと頷く。 だから宮城も諦めるように息をついて、カップにコーヒーを。 そして、気に留めることも無く詩織の隣に座ったりするものだから。 「何か進展したの?」 「進展って何?」 首を傾ける詩織に、カップを持ち上げニヤリと笑う美紀。 「宮城先生とキスした、とか」 予想外の台詞に手に持ったカップだって落としそうになって。 「はっ!? ――あ、ありえないってば!」 首をブンブン振って思いっきり叫ぶ詩織。 「だよなぁ? 俺としてはホテルまで連れ込んだからそれっくらいは」 一人ブラックコーヒーを片手に渋い顔でそんなことを言うから、 「つ、連れ込んだって、ご飯食べただけでしょう!?」 「へぇ、二人でホテル。これはスキャンダル物ね」 「いっそ、誰かパパラッチしてくれねぇかな?」 必死で弁明する詩織に楽しそうな美紀の声、さらに宮城が不満顔でそんなことを言うから―― 「ありえないってばっ!!」 そんな叫び声に美紀は「やれやれ」と肩をすくめ、 宮城は「そこまで否定されると傷つくなぁ」なんて笑った。
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