第6話

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コンコンッと規則正しく鳴らされるドア。 それに宮城が「どうぞ」と返せば、ドアはがちゃりを開いた。そこには、 「――恭!」 「シオ、やっぱりここだったね」 薄く笑う恭の姿。 「ど、どうして!?」 乱暴にカップをソーサーに置いて、カバッと立ち上がる詩織に恭はクスリと笑う。 「教室に行ったらいなかったし、部活は無いからここかなって」 「お前は探偵か?」 呆れるような宮城の声に恭は一瞬冷たい視線を。 けれどすぐににっこりと優しい笑みを詩織に向けた。 「シオ、帰ろう」 その声に詩織はあたふたとカバンを持って「う、うんっ」と答えると下からはわざとらしいため息が。 「俺を無視か?」 「無視なんてできるはずが無いでしょう? 宮城先生」 そんな二人の会話に詩織はオロオロ、向かいに座る美紀の瞳はランラン。 「シオがお邪魔しました」 「あくまで保護者かよ」 軽く頭を下げる恭に宮城は皮肉じみた笑いを浮かべた。 けれどそれに対して恭は何も反応することなく、いつもと変わらない笑みを今度は美紀に向ける。 「美紀ちゃんも車を待たせてないなら送るけど」 そんな対応に美紀もにっこり笑う。 「今日は英会話の日だし、既に車は待たせてるので」 その台詞にすべてを察したのか、恭はほんの少しその笑顔に苦味を足した。 「ごめんね、シオにつき合わせて」 「いーえ、いつものことですから」 「もうっ、美紀!」 唇を尖らせる詩織に「ほら、帰るよ」と背中に手を回して、 「失礼します」 そう言って恭は詩織を連れて数学準備室を出て行った。
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