第6話

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「ねぇ、先生?」 「なんだ?」 残されたのは二人。 「あれって相手として認めてもらえたってことなんですかねぇ?」 温い紅茶を啜りながらの美紀の台詞に宮城は苦いコーヒーを一気に飲み込む。 「どうかな。あいつは同じ土俵に立つ気は無いみたいだけど?」 皮肉な笑みを浮かべる宮城に美紀はクスリと笑った。 「楽しそう」 そう言えば、宮城もニヤリと笑って、 「楽しいねぇ。あんな感情むき出しにされると萌えちゃうよなぁ」 「もしかして、そっちが本命とか?」 「バーカ、俺はノーマル」 「のわりに、恭さんと話したがりますよね?」 「頭のいい奴と話すのが好きなだけ」 そんな台詞に美紀は「ふーん」と鼻を鳴らして、カップを置いた。 「で、何があったんですか?」 「内緒」 「あったんだ」 ニンマリする美紀に宮城は渋い顔を見せた。 「っつーか、お前も早く帰れよ」 そう言われ美紀は「はいはい」と言いながらソファから立ち上がり、 「そんじゃ、紅茶ご馳走様って前の彼女に伝えといてください」 ヒラヒラと手を振ってドアの向こうに消えた。 「ったく、ガキのクセに」 そう呟いて、また苦いコーヒーをカップに注ぐ。 あいつに興味があるのは境遇が似てるから。 すべてを受け入れるのか、 跳ね除けるのか。 それはすべて――。 「あいつはどうすっかな」 これは親近感というものなんだろうか? そんなことを考えると奇妙な笑いがこみ上げてくる。 「俺は――」 どうするのか。 決断の日は近い。
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