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「お前って冷たいよな」
「そう?」
軽く返事をして柊の隣へ座る。
「やっぱ、党内派閥に負けたからか?」
「何の話?」
何食わぬ顔でそんな言葉を返すから、柊もフンッと鼻を鳴らして口の端をあげる。
「で、次は誰と付き合う気だ?」
厭味をたっぷり含んだ台詞。
なのに恭はクスリと笑って柊を見た。
「俺は誰とも付き合ってないし、これからも付き合わないよ」
「じゃ、今までの女はみんな友達か?」
「友達、か……」
そう口にして恭は、車窓に視線を向けた。
眼下には手を振る女の子たちがいっぱい見える。
だからにっこり微笑んで軽く手を振れば、上がる悲鳴。
車内にいても聞こえるそれに柊が顔を歪めれば、恭はシートに背を預け今度は柊ににっこり微笑んだ。
「柊ほど分かり合えた友達はいないと思うけど?」
「その誤解を生むような言い方は止めろ」
さらに引き攣る柊の顔に恭はクスリと笑う。
「真実だから」
「止めろっ!」
その声に笑いながら「はいはい」と答えれば、動き出すバス。
恭がまた窓の外に視線を落とし、もう一度軽く手を売ればまた悲鳴じみた歓声がバスを見送った。
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