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大勢の生徒に見送られていくバス。
それを詩織は3階の窓から見下ろした。
「そんな恨めしそうな顔してないで行けばよかったのに」
呆れるような美紀の声に、詩織は気に入らないのか唇を突き出す。
「あんなに沢山いたらあたしなんて気付かないよ」
「なわけ無いじゃん。周りを全部無視して、詩織に声掛けるに決まってるでしょ」
「そう、かな?」
「ニヤけた顔がキモい」
「――もうっ!」
そしてまた詩織は唇を尖らせる。
美紀からフイッと顔を背けて、机に頬杖をついて。
視線の先には綺麗に並べられた常緑樹が葉を揺らす。
その広大な敷地には今居る校舎よりも高い建物がいくつも並ぶ。
『桜学園付属大学』
「恭は、本当にここの大学でよかったのかな?」
「そんなの本人に聞きなさい」
「恭がにっこり笑ったら面接なんて絶対落ちないと思うんだよね」
「相手が女教師なら効果倍増ね」
美紀から返ってくる言葉はどれも厭味を含んでいるから、
「もういい」
詩織は不貞腐れて机に伏せた。
その姿に美紀は呆れて失笑の声を漏らす。
「いいじゃん。ここの大学なら詩織も入れるよ。そしたら、楽しいキャンパスライフ♪」
そんな言葉ですら棘を感じて。
「それって、あたしが『馬鹿』だって言いたいの?」
「捻くれてるわね。お金持ちって意味よ」
「もうっ!」
今度は頬を膨らませて机に伏せる詩織に、美紀はクスクス笑いながら「よしよし」と頭を撫でた。
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