406人が本棚に入れています
本棚に追加
落ち葉が、ハラハラと舞い落ちる。
受験の日、まだ沢山残っていた葉もほとんどが舞ってしまった。
訪れる冬に太陽の光は力を失い、人々はコートに身を包む、そんな季節。
「恭、おめでとう!」
「シオ、こんなの誰だって受かるんだから」
苦笑する恭にそれでも詩織は笑いかける。
「でも、おめでとう!」
まだ、大学から知らせは来ていない。
だけど分かるのは『大河内』だから。
直に連絡があるわけではないけれど。
気にしてくれる人が誰かに相談し、相談された人がまた誰かに。
政財界とはそう言うもの。
誰かと誰かが繋がっている。
その誰かが『大河内』に知らせてくれたのだ。
「明日には入学手続きの資料が送られてきますよ」
そんな鈴花の声に恭はさらに苦い笑いを浮かべた。
「今夜はお祝いしようね? 恭、何が食べたい?」
「シオは何がいい?」
「恭のお祝いなんだってば!」
口を尖らせる詩織に恭はふんわり笑う。
「だから、シオの好きなものでいいよ」
「もうっ! 恭はいっつもそれなんだから!」
頬を紅葉させながら唇を尖らせる詩織に恭は笑う。
きっと、
これは嵐の前の静けさ。
最初のコメントを投稿しよう!