【短編ホラー】レフト

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別れたとき部屋の鍵は返してもらったが、元カノは合鍵を作っていたのだろう。忍び込まれ、風呂場にでも隠れておれを待ち構えていたのだ。 おれの部屋は1階で車を横付けできるから女一人でもおれを引きずってどこかへ運ぶことはそれほど難しいことではなかったはず。 おれが拉致されたのはどこかの廃墟となったビルの地下らしい。 コンクリート打ちっ放しの表面はザラとした感触をさらけ出して所々壁が剥がれ落ち、ポンプのような機械から太い配管が上に向かって伸びている。 「おれのことは忘れてくれ」 立ち上がろうとしたが、まだ薬の効き目が抜けてないのか、頭が鉛のように重くてすぐに片膝をつけて座った。
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