11人が本棚に入れています
本棚に追加
電波塔は恋をする。
情報を彼に伝える誰かに、彼が情報を伝えた彼らに。
「今の世界は青銅期です」
しかめっ面して、神話を引用する現実主義者。汗だくで彫り上げた氷の炎の彫刻。
「世界は矛盾だね」
独り、荒野でぽつんと呟く電波塔。世界で一番、いろんなことを聞いて、見ているはずの電波塔は、いつも、常に独りで聳え立つ。もしかしたら彼が情報を伝えた彼らは、もういないのかも、しれないのに。
「ねぇ、確かにこれは愛の物語だ」
その呟きを聞くヒトは、誰もいないのに。
最初のコメントを投稿しよう!