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「……わかった。代償として俺の寿命を持っていけ」
「……じゅ、寿命だっ……て」
それまで虫の息だった領主が口を開いた。
「キャハハハッ! 領主様はサッシがいいネェ。そうだよ思いダシタ? ボクと契約シタでしょ」
そう言って悪魔は剣を取り出した時のように俺の胸に手を突き刺す。
引き抜かれた手には白い宝玉のようなものが握られている。
俺は力なくその場に倒れ込んだ。
徐々に体の力が抜けていく、この世を去るというのに何の感慨も無かった。
「意外と長いネェ。六十年くらいカナ、ハイどうゾ」
悪魔は死にかけの領主に宝玉を持たせた。
「ソレを飲み込めば寿命がのびるヨォキャハハハッ!」
領主は必死に手の中の宝玉を飲み込もうとするが口元までも運べない。
そうこうしているうちに、領主は遂に力尽き息絶えた。
「キャハハハッ! もったいないから寿命は回収シヨッと。今回はナカナカ面白かったネェお兄さん」
「おい……どうして……どうして俺はまだ生きているんだ」
「ああソレはネェ、お兄さんから寿命は貰ったけど、命はソノママだからダヨ。だからお兄さんはコノ世界で永遠に生き続けるんダヨ。なんたって寿命が無いカラネ。しかも寿命がナイカラ歳も取らナイし、いわゆる不老不死ッテやつダネ。キャハハハッ!」
剣を握った右手から広がるようにして力が戻ってきた。
俺はゆっくりと立ち上がると剣を振り上げ悪魔の首を斬り飛ばす。
「キャハハハッ!お兄さんチョー過激ダヨ。あっソウダ自殺しようとしても無駄ダカラねェ。お兄さんを傷つけるモノは全部灰にナルよ、ボクがあげたチカラでネェ」
キャハハハと甲高い声をあげる喉元に剣を突き立てる。
だが、悪魔は喋り続ける。
「じゃあソロソロ限界ダカラ、また気が向いたら会いに行くネェ。キャハハハッ! 」
悪魔だったモノはただの肉塊に変わる。
永遠に続くと言われたこの命の時間を思うとその重さに押し潰されそうになる。
こうして俺は自分の『死』さえも奪われた。
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