第1話

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俺から大切なものを奪った奴らに復讐する。 そうだ、俺と同じような絶望を与えてやりたい。 そう思ったとき、心に憎しみの炎が燃え上がった。 「いい顔してるヨお兄さんッ! やっぱりお兄さんを選んで正解ダヨ。チカラが欲しいカイ? 」 「ああ」 俺の答えを聞いて悪魔は満足そうに言う。 「じァね、チカラを与える代償としてお兄さんの寿命を貰うケド、いい?」 だが 寿命を奪われたら復讐する前に死ぬんじゃないのか、そんな疑問が頭に浮かぶ。 「アッ大丈夫ダヨ。代償ハお兄さんが復讐を見事成し遂げたトキに貰うカラネ」 俺の心を読んだかのように悪魔が答える。 「そうか……なら俺に力を……奴らに絶望を与える力をくれッ! 」 「リョーかいッ! それジァいくよ、エイッ! 」 悪魔は気の抜けるような掛け声でおもむろに腕を振り上げると、俺の胸にその手を突き刺した。 「……クゥ」 声にならないうめきが漏れる。 何かを探るように悪魔が手を動かす度に激痛が走る。 「うーん……キャハッ! あったこれだァ!」 そう言うと悪魔は一気にその手を引き抜いく。 その手には赤く光る刃と禍々しい意匠の彫られた鍔が印象的な一振りの剣が握られていた。 「ハァハァ……なん……なんだそれ」 乱れた呼吸を整えながら胸元を触るが、傷ひとつない。 「コレはボクがお兄さんに与えるチカラの一部ダヨ」 そう言うと悪魔はおもむろにその剣を振るった。 「なッ!」 悪魔の背後にあった女神像の首が落ちた。 硬い石で出来た女神像をあっさりと切り捨てた悪魔はキャハハハと楽しげに笑う。 「コノ剣はね、チョー高性能だから剣術なんてシタことナイお兄さんでも、自然と戦えるヨッ! だから心配ナシだねェキャハハハッ! 」 そう言って手渡された剣は不気味なくらいしっくりと手に馴染んだ。 「じぁ行こっかァ! イザ復讐の地へれっつごぉダヨ」 まるでピクニックにでも行くかのような気軽さで悪魔は言うと、視界が溶けるように歪んだ。
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