第1話

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「り、領主様ッ! お逃げくださいッ! もうすぐそこまで迫っ……グハッ」 領主と呼ばれた男は、報告していた兵士を、突然斬り伏せ現れた俺に驚いていた。 「き、貴様ァ私を誰だと思っている。下賎な平民の分際で私の屋敷に……ひぃッ」 耳障りな声でわめく領主の喉元に赤く光る剣を突きつける。 「うるさい黙れ、俺の街を兵士たちに襲わせたのはお前か? 」 「だったらどうしたというのだ。あのようなとるにたらん街の一つや二つ……ギャアアアア」 醜く太った領主の体に剣を突き刺す。 「そうか、よくわかった豚野郎。お前は簡単には死なせてやらんぞ」 そういって致命傷にはならない程度に 斬りつける。 「うがぁぁぁぁぁぁぁ」 何回も何回も何回も、悲鳴をあげることさえ出来ないほど痛めつける。 高価な絨毯は血を吸って、血の臭いが部屋に充満する。 「……こ……ろして……殺して……殺して……ください」 領主は血の海の中で啜り泣くようにして懇願する。 俺は冷たい笑みで、その哀れな姿を見下ろす。 「キャハハハッ! お兄さんッテバ、ボクよりアクマみたいダヨォ。キャハハハッ! 」 兵士の死体がよろよろと起き上がり、あの薄気味悪い笑みを浮かべる。 「悪魔か……まだこいつを殺していないし、復讐はまだ終わっていないぞ」 「マァ落ち着きナヨ、ソイツはどうせほっといても死んジャウシ、契約達成でいいジャン。お兄さんも早くシニタイでしょ? 」 ああ、そうだ。 復讐をしていても、この虚無感は満たされなかった。 故郷の、家族の仇も討った。 もう俺はこの世に生きる意味が無くなったんだった。
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