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「り、領主様ッ! お逃げくださいッ! もうすぐそこまで迫っ……グハッ」
領主と呼ばれた男は、報告していた兵士を、突然斬り伏せ現れた俺に驚いていた。
「き、貴様ァ私を誰だと思っている。下賎な平民の分際で私の屋敷に……ひぃッ」
耳障りな声でわめく領主の喉元に赤く光る剣を突きつける。
「うるさい黙れ、俺の街を兵士たちに襲わせたのはお前か? 」
「だったらどうしたというのだ。あのようなとるにたらん街の一つや二つ……ギャアアアア」
醜く太った領主の体に剣を突き刺す。
「そうか、よくわかった豚野郎。お前は簡単には死なせてやらんぞ」
そういって致命傷にはならない程度に 斬りつける。
「うがぁぁぁぁぁぁぁ」
何回も何回も何回も、悲鳴をあげることさえ出来ないほど痛めつける。
高価な絨毯は血を吸って、血の臭いが部屋に充満する。
「……こ……ろして……殺して……殺して……ください」
領主は血の海の中で啜り泣くようにして懇願する。
俺は冷たい笑みで、その哀れな姿を見下ろす。
「キャハハハッ! お兄さんッテバ、ボクよりアクマみたいダヨォ。キャハハハッ! 」
兵士の死体がよろよろと起き上がり、あの薄気味悪い笑みを浮かべる。
「悪魔か……まだこいつを殺していないし、復讐はまだ終わっていないぞ」
「マァ落ち着きナヨ、ソイツはどうせほっといても死んジャウシ、契約達成でいいジャン。お兄さんも早くシニタイでしょ? 」
ああ、そうだ。
復讐をしていても、この虚無感は満たされなかった。
故郷の、家族の仇も討った。
もう俺はこの世に生きる意味が無くなったんだった。
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