プロローグ

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地球の中立国リヴォールで暮らしはいつもが平和だった。 平穏な毎日、自然に囲まれ領土は他国と比べれば小さいがそれでも大きな方だ。 豊かで学校での青春、恋愛は面白く戦争なんて嘘みたいに感じていた。 こんな平和が続けばいいのに、戦争なんてなくなればいいのに……そんな少年の願いは打ち砕かれる。 必死に家族と街中を走って逃げる少年。 息を切らし肺が苦しくなってもとにかく走り続ける。 怯える妹の手を母親が掴んで父親と息子が2人に密着している。 上空では戦闘機が、地上では機体が戦闘を繰り広げている。 「何でこんな…中立国じゃないのかよ!」 中立国での戦闘はあり得なかった。 毎日が平和だったせいで世界がガラリと変わって見える。 「父さんどうなってんだよ!」 「分からん!だが今は走って港に行くんだ!」 港には避難船がある、乗れば生きて逃げられる。 前へ、前へと走る兄の姿を見てつい呼んでしまう。 「お兄ちゃん…」 「大丈夫だレナ。避難船に乗ればまた学校に行けるさ、だから生きて…」 唐突だった。 流れ弾のビームが地面に直撃し少年と妹、両親は爆風で吹き飛ばす。 長い距離を飛ばされ地面に叩きつけられて全身に激痛が走る。 呻きながら閉じた目をゆっくり開けて起き上がる。 「うぅ…父さん、母さん…」 爆炎がコンクリートの地面の上で燃え上がる。 両親の姿がない、だが妹の腕が一瞬だけ見えた。 良かった… 右腕の痛みを押さえながら歩み寄る。 しかしそこにあったのはレナの腕だけだった。 レナは…? 息を飲む事しかできない少年、離れた場所には両親の姿も目にした。 母親は火に焼かれ父親は瓦礫に身体が潰されていた。 「あぁ…あぁ……!」 家族の死に言葉にできず膝から崩れ落ちる少年"瀧縞 レイジ"の瞳から涙が流れる。 火の海、地面に染まる赤い血と家族の死体、何もできない無力な自分。 何を言葉にすればいいのか分からない。 「うわァアァアアーッ!!!」 崩れた街の中で悲劇の少年は泣き叫ぶ事しかできなかった。
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