第1話

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 上を見上げると大きな看板が掲げられておりそこには明智総合病院と書かれている。どうやらその地方で屈指の大病院のようである。  病院の前には大きな公園がある。そこに老人が一人ベンチに腰掛けて何か食べ物を食べている。そして、何かにおびえるようにぶるぶる震えている。何に震えているのかは分からないが、この建物から発せられる異様な気配と関係ありそうである。この建物は魔物にでも取り憑かれているように不気味な空気を身にまとっているようである。  ここで感覚を研ぎ澄まして辺りの空気感を感じてみる。すると周囲の空気に何かの声が混じっている。 「あ、あ、誰か・・助・・」  なんの声だろう。何か訳が分からないが、誰かに助けを求めているようである。しかし、いったい誰に。そうするうちに声は聞こえなくなり、また元の静観とした雰囲気に戻る。なんだったのか幽霊が助けを求めてでもいたのか。  目を老人に向けると相も変わらず食べ物を食べている。しかし、もうぶるぶる震えていない。  もしかしたら老人が震えていたのは謎の声が聞こえてくるのを暗示していたのかもしれない。老人にも自分が震えていたのに気づいたかどうか。全く以て謎である。この土地には何かよからぬ秘密があるのかもしれない。
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