1381人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
初めて出会う香水の香りに包まれた彼の部屋。
14畳程はあると思われるリビングは、真っ白な壁に家具はグレーとブラックで統一されとてもシンプルな空間だった。
名東区でこれだけの広さのリビングが確保されたマンション。
1LDKでも月15万以上はするんだろうな…。
初めて入る寮以外のドクターの部屋
私はソファーに座り、遠慮がちに部屋の中を見回した。
「飲み直しはワインでいいよね」
先生は、赤ワインとグラスを目の前のテーブルに置き微笑んだ。
「じゃあ乾杯を...あ、そう言えば俺、神崎さんの下の名前知らなかった」
「えー知らないの?白衣のネームプレートに書いてあるのに。…綾子です。神崎綾子」
病棟に出入りしてた時はあんなに関わってたのに。
やっぱり私なんて全く眼中に無かったって事か...
そう思うと、少し残念。
「ごめん。ナースのネームプレートなんて見たことないや。綾子ちゃんか。改めて、綾子ちゃんとの出会いに乾杯」
二人の手にするグラスが触れ合った瞬間、静かな空気に包まれ優しい音色を奏でた。
「出会いに乾杯だなんて、今時そんなキザなセリフ言う人がいるんだね」
「イイだろ?たまにはキザなセリフも」
耳の辺りに感じるほのかな熱。
自分でも驚く程の過剰反応に戸惑う。
見たことのない先生の笑顔。「みんなの知らない先生」と言う特別感が、私のテンションを高める。
一緒にいると楽しい。
少し辛口のワインも舌の上で甘く溶けていく。
最初のコメントを投稿しよう!