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遮光カーテンの両端から僅かな朝の光が射し込み、煙草の匂いと彼の香水の香りが染み付いた部屋で私は目を覚ます。
目覚まし時計を置き、その手を伸ばして片側のカーテンを開けた。
その瞬間、朝とは思えない程の強い真夏の光が差し込み目を細めた。
私はベッドから足を降ろし、パジャマ代わりのTシャツに下着姿でキッチンへと向う。
電気ポットに水を入れて、スイッチを押し再びベッドに潜り込んだ。
「ねぇ、そろそろ起きた方がいいんじゃない?」
背を向け寝息を立てる彼の肩を軽く揺さぶる。
「…んん、…いま何時?」
「6時半。今日は朝イチの執刀医じゃないの?」
「うん、そう。朝イチでラパコレ(腹腔鏡下胆嚢摘出術)」
背を向けたまま、途切れ途切れに彼は答えた。
「だったら早く起きなよ。オペ前に、患者さんに挨拶行かなきゃいけないんでしょ?」
「ん…起きる、起きる」
額に手を乗せ、ゆっくりと私の方に体を向けた。
「トースト食べる?珈琲だけ?」
「珈琲と…綾子が食べたい」
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