二人の関係

2/14
前へ
/18ページ
次へ
遮光カーテンの両端から僅かな朝の光が射し込み、煙草の匂いと彼の香水の香りが染み付いた部屋で私は目を覚ます。 目覚まし時計を置き、その手を伸ばして片側のカーテンを開けた。 その瞬間、朝とは思えない程の強い真夏の光が差し込み目を細めた。 私はベッドから足を降ろし、パジャマ代わりのTシャツに下着姿でキッチンへと向う。 電気ポットに水を入れて、スイッチを押し再びベッドに潜り込んだ。 「ねぇ、そろそろ起きた方がいいんじゃない?」   背を向け寝息を立てる彼の肩を軽く揺さぶる。 「…んん、…いま何時?」 「6時半。今日は朝イチの執刀医じゃないの?」 「うん、そう。朝イチでラパコレ(腹腔鏡下胆嚢摘出術)」 背を向けたまま、途切れ途切れに彼は答えた。 「だったら早く起きなよ。オペ前に、患者さんに挨拶行かなきゃいけないんでしょ?」  「ん…起きる、起きる」 額に手を乗せ、ゆっくりと私の方に体を向けた。 「トースト食べる?珈琲だけ?」 「珈琲と…綾子が食べたい」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1377人が本棚に入れています
本棚に追加