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「俺、神崎さんに誘惑されてるのかな」
「なっ、ち、違います。誘惑だなんて」
一瞬にして、自分の放った言葉の軽率さに気づき、顔が熱くなる。
さっきから私、どうしちゃったの?
【穴があったら入りたい】まさに今がそれだ。
咄嗟に先生から視線を外し、流し込むようにビールを一気に飲み干した。
「神崎さん、この宴会が終わったら二人で消えちゃおうか」
「えっ?」
「俺も神崎さんともっと話がしたい。君を知りたい。飲み直ししよか、俺の部屋で」
彼は辺りに視線を配りながら、そっと私に耳打ちした。
その言葉と私を試すかの様な余裕の笑顔。
【この男は危険な男だ】
私の心が警報を鳴り響かせる。
同時に、女の私が彼を欲しがる…。
男がいい女を見て『抱きたい』と感じる様に
女もいい男を見れば『抱かれたい』と感じる。
恋愛感情が無くても、相手によって女の本能が欲する時もある。
危険な香りのする男。
私を見つめる茶色がかった瞳。
警戒心と好奇心が絡み合い、私の心は身動きがとれなくなってゆく。
知りたい…
この男を…もっと知りたい...
私は膝の上に乗せたルイ・ヴィトンのショルダーバッグの端を握り、胸の鼓動が急かすままに小さく頷いた。
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