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◆◆◆
「店長も恥ずかしいことしますね・・・」
思わず言ってしまった。
俺の言葉を気にする様子もなく、店長は『そうだね』と笑った。
「さて、そろそろかな。」
時計を見ると17時。そろそろ受け取りの時間だ。
『カラン』
入り口のドアが開き、寡黙そうな男性が入ってきた。
「私、高藤様の使いの者です。本日依頼した品物を受けて取りに参りました。」
「いやあ、お疲れ様です。荷物はあちらにあります。」
店長はテーブルに積まれた山になった荷物の方を指す。
それを確認すると、その男性は頭を下げる。
「急な依頼にも関わらず、ありがとうございました。」
「いいえ。」
「にしても、すごいですね。この量。」
「ええ。元気付けたい方がいるらしいです。」
言ってから、その男性はしまったという顔になる。上司のプライベートをばらすのはご法度なのだろう。男性が気まずそうに俺と店長を見る。
だけど店長はというと、その言葉を聞いてみるみる内に笑顔になる。
「そうかあ、覚えててくれたんだ。」
あまりにもうれしそうに言うもんだから、俺もうれしくなってしまう。
見たこともない高藤さん。
ちゃんとその人の事、笑顔にしてやれよ。
と心から思った。
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