第29話

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 霙に手を引かれていた俺だが、そう思い立つと霙より前にでた。 急がなくては! ――火事だ! 出口に向かわなきゃ! ――きゃあああ! 煙よ! 「霙! 本当に火事かも知れない……気をつけろよ。俺の手を掴め!」 出口へ一直線に向かう人々。我が先だと言わんばかりに、熱気と共に押し寄せる。 怒涛の大波に逆らうが、ぶつかり合う体に、スムーズに舞台へと近づけなかった。 「こっちはあんたより場数を踏んでるのよ? この波から逸れるのよ! 壁際に動いて!」 「ああ、分かった!」
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