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「なに?妹の小ぶりな胸に欲情しちゃった?」
と訊いてくる鈴莉の顔が凄くニヤニヤしてる。
「嬉しそうに訊くな。てかお前、やっぱりわざとか」
こいつ、小ぶりとか人から言われるのは嫌なのに、自分から言うのはいいのな。よく分からん。そして押し付けんじゃねえ。何度でも言う、柔らかいだろうが!
「ダメだよ。妹ちゃんみたいな貧相な身体じゃ、鈴斗君は欲情しないんだよ。そう、あたしみたいな身体じゃないとね!」
「いや、お前の身体にも欲情しねえから」
サーセン、実はちょっとだけ興奮しました、しちゃいました。だって男の子だもん。仕方ないよね。
うん、愛実さん全然聞いてないね。はいそこ身体をくねくねさせない。変な声上げながら脳内トリップしない。
鈴莉も鈴莉で、ニヤニヤしっ放しだ。ほらほら、年頃の女の子がそんな顔しちゃいけませんよ。あと、この腕を離してくれると、お兄ちゃん、嬉しいかな。
というか、互いの話すら聞いてないんじゃなかろうかこいつら。
それでもまあ、こういう事は度々あった訳だし、どうすべきかくらいは心得ている。
はあ、と思わず溜め息。
だらしなくしがみ付いている二人を引きずるようにして、冷視線の十字砲火の中をそそくさ歩いて逃げ帰るのであった。
で、自宅――つまりは神社の境内に足を踏み入れた瞬間、いつものように九紅璃は飛び付いてくる。そう、いつもの事なので、この事態は予測済みだ。ひょいと身を翻すと、元居た場所に影が落ちた。九紅璃が地面に落ちた。びたんという音がした。
正面から抱き付くスタンスでそんな事をすれば、勿論顔面が地面と接触する。……普通に痛そうだが。ギャグ漫画と見紛うばかりのフォームの綺麗さに、呆れを通り越して逆に心配だ。
だが、この妖狐は何もなかったかのように立ち上がり、 頬を膨らませて言った。
「もー、何であたしの愛が籠った抱擁を避けるかな鈴斗は」
解せぬ、と顔一杯に表現する。いや、解せないのはこっちだっての。
「黙れ淫乱。お前は見境なさ過ぎなんだっての」
あと、軽いノリで童貞とグッバイする気概もありませんよ俺には。
「大丈夫だって、こんな事するの鈴斗にだけだから」
やっぱり俺にはするんじゃねえか。内容が内容だけに素直に喜べないし。
「という訳で、大人しくあたしに抱かれなさい!」
「当然、そんな要求は棄却する!」
お前に捕まると、いけるところまでいっちゃうから。
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