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趣味ではないが、アレがあった。俺の、唯一とも言える特技だ。
「――占い、かな。タロットとかよりは、易学とかの方が得意だけど。一年間よろしく」
刹那、クラス中が騒ついた。それもそうか、自己紹介でいきなりスピリチュアル男子である。どんな奴だよ。いや俺だけど。
やっべ、これはしくじったか?
まあコミュ力がカンストしてる愛実様がいらっしゃるので、そのおこぼれに預かる形で私は文句ないです。情けねえな。
皆の自己紹介が終わり、自由時間。次々と作られていくグループ。おいそこ同じ中学とかズルいぞ。俺なんか愛実他数名(愛実以外全員他クラス)だってのに。もっと友達の輪を広げようぜ。
「鈴斗だったか?」
そんな俺に、前の席から声が掛かる。
「確か、真宮……」
「真宮剛(まみや・つよし)。まあ好きに呼んでくれ。それよりお前、占いやるって言ったよな?」
まさかそこに食い付いてくれる人物をサルベージするとは。この際、初対面にしては少し馴れ馴れしいかな、などという互いに損しか生まない考えはゴミ箱に破棄する。
「ああ。さっきも言ったけど、西洋のは苦手だ。てかタロットとか普通は持ってこないし」
「手相は?」
手の平を向け、剛は言った。
「自信はないけど――それに、最近の手相は案外当てにならないんだが、分かった。見てみる。何を見てほしい?」
今と昔じゃ、筋肉の使い方が違うし、手相だって様変わりしている。
「明日何が起こるか、なら当たり外れがすぐ分かるだろ?」
そうなのだけれども。
「手相でそれは難しいな。人生を通した運勢とか、性格とか、そういう事は言えるんだが」
「なる。じゃ、それで頼むわ」
特に反論する事もなく承諾する剛。これはこれで聞き分けがいいのかもしれない。
「悪いな。もし将来当たってたら、なんかあいつがあんな事言ってたな程度に思い出してくれ」
「了解」
実際、こと占いに関しては俺はそんなに得意ではない。こういうのは妹の方が余程長けている。リアルスピリチュアル女子だし。
かといって、的を外すかと言われればそうではないが。 要は、占う事の出来る事象の広さと深さの差だ。
俺のは、どちらかといえば生活費を稼ぐ目的の方が強かったし。外さなければ問題ないレベルだったからな。
「さて。まずは、金運からいこうか。金運は――ぼちぼち。ただ、貯金をするのが苦手だな。自制できれば困る程じゃあない」
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