懐かしのパン屋さん

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翌朝目が覚めたのは当然青空の下で、ビビったのは朝に似合わない怖い人達が濡れた俺の服に手をかけている光景だった。 「うわっ!」 「こーすけくんだっけ?借金の支払いまだできないのかなぁ?」 「あ…えぇと…」 そうなのだ。家を売り払ったり家具とかを質に入れたりしたけど、それまでの生活でもお金がなかったから借金をしていたのだ。 「身体で払ってくれてもいいんだよ?」 「ちょっ…やめてくださいっ…」 「黙ってろ!!」 抵抗なんてできない立場だけれど、やっぱり怖いものは怖い。 シャツのボタンを飛ばされた。 もう死んでしまいたいくらい辛い。 「おはようございまーす、配達に来ましたぁ」 近くで男の人の声がした。 チャンスとばかりに声を上げる。 「助けてください!!」 その男の人だと思われる人がすぐに駆け付けてくれて、怖い人達は逃げていった。 「ありがとうございました…」 顔を上げると昨日お世話になったパン屋のお兄さんだった。 「あれ、昨日の…?っ、ちょっと待ってて!」 お兄さんも俺を見て気付いたらしい。 お兄さんはUターンして俺の前から一旦立ち去った。 そういや配達とか言ってたっけ。 ボタンも飛んでしまったし、合わなくなったシャツの袷を手で留めて空を眺める。 特に何も考えてなかったけど。 「ごめん、お待たせ。とりあえず車にこれしかなくて悪いんだけど、着替える?」 お兄さんはまた俺に服を貸してくれるつもりらしい。 けれどあの似合わない服ではなくて、お店のユニフォームだった。 「風邪引いちゃうよ?車内で着替える?」 さっき大声を出したせいで近所の人が出てきてしまって、周りの目があったからかお兄さんが気を使ってくれた。 どれだけ優しいんだ、この人は? 「言いたくなかったら悪いんだけど、もしかしてお家ないの?」 「う…」 「…うちに来るかい?弟の服が沢山あるし、部屋は空いてるから」 このまま外に居たら警察のお世話になりかねないし、また怖い人達に襲われるかもしれない。 その時は恐怖しかなくて、お兄さんの提案に頷いてしまった。 「弟さんいるんですね」 「しばらく会ってないけどね。帰ってきそうもないし遠慮しないで」 俺を弟の代わりと思っているのか、お兄さんは笑顔だ。
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