懐かしのパン屋さん

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そのままパン作りに携わることになった。 パンのこね方とか手順とかとにかく一日では覚えきれないほどのことを教えてもらって、実際に店頭に立ってレジ打ちも教えてもらいながらやった。 働くことは大変ながらもすごく楽しかった。 二人でも大変なのに、これを今まで一人でしていただなんて。 それでも人に優しく笑顔でいられるのはなぜなんだろう。 「父ちゃん!」 「おー、光祐!」 「へへっ、俺ついにバイト始めたんだぁ」 「バイト?犯罪チックなモンなら父ちゃん許さねーぞ?」 「超健全!パン屋さんなんだ!これその店のパン!…俺はまだ食べたことないんだけど…」 父ちゃんのお見舞いに来て、バイトを始めたことを伝えた。 ついでに土産として店のオススメのパンを持ってきたけど、袋に書いてある店名を見て父ちゃんが目を丸くしている。 「浅野パンじゃねーか。商店街んとこだろ?」 「知ってんの?」 「お前昔何度か行ったことあんだぜ?」 「そーなの?」 「まだあの兄ちゃんがやってんのか?」 「うん」 訳ありなのだろうか。 「光祐があの兄ちゃんのこと大好きで、金もねぇから50円握りしめてパン買いに行ってたもんよ。金の計算もできねぇガキだったてめぇは、足りてもねぇくせにパン買って帰ってきたんだぜ?兄ちゃん困ってただろうな。あーあと奮発して100円出したらお釣り50円きっちり返ってきたこともあったな」 なんとなく覚えているかもしれない。 パン屋のお兄さんが小さい俺に視点を合わせてしゃがんでくれて、一緒にパンを選んでくれた。 あれはお兄さんだったんだ…。 「運命?なんつってな、ははは!」 「運命…か…」 「え?おい!父ちゃん認めねーぞ!?男同士なんてっ」 「な、な、何言ってんだよっ!もー、俺帰るからな!父ちゃん早く退院しろよ?もう金払えねぇんだからな!」 逃げるように病室を出ると、看護師さんに睨まれた(ように感じた)。 ちょっとうるさくしすぎたらしい。 お店に帰るとお兄さんは相変わらず笑顔で迎えてくれた。 さっき父ちゃんに言われたことを思い出し、お兄さんのことを意識してしまう。 「どうしたの?」 「いえっ…なんでもないです…」 でも俺がちっちゃい頃には既にお店を切り盛りしていたということは、すごい年上…? 「博章さんて高校行ってました?」 「うん、高卒で店継いだよ?それがどうしたの?あ、頭悪いって?」
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