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高校デビューでハラハラドキドキだった一年がさらっと過ぎてゆき、俺は二年生に進級した。
高校二年となると、もう既にほとんどの生徒が大人びてくる。
そんな中俺は、ちっちゃいし声変わりすらしていない、天然記念物的存在になっていた。
二年生に上がってもドキドキというのはあって、友達はできるのか、とか、先生は誰なのか、とか色々と楽しみなものだ。
「おはよー」
後ろの席に鞄を置いた奴は、出席番号が俺の次の奴だろう。男か…。
「おはよ!俺、橋本奈津!宜しく!」
「宜しく、奈津。俺は松浦将哉」
「将哉って、どういう字書くの?」
「将軍の将に、なんか難しい哉っていう字」
「あー、俺書けねぇや。とりあえず、しばらく前後でよろしくな!」
垣根のなさそうなこいつには多分すぐ慣れると思った。
元々人見知りはしないタイプだけど。
「奈津ー、お前3組かよー?」
「そーだよー。お前何組?」
廊下から声を掛けてきた友達の所に行く。
将哉の視線を感じて振り返ったが、将哉は他のクラスメートの方に行ってしまっていた。
「席着けよー」
担任らしい先生は、一年生の時に現代文を教えてくれていた先生だった。
「ねぇねぇ、奈津。可愛い声だな、って思ってたけど、もしかして成長期迎えてない感じ?」
「はぁ!?」
「あ、気にしてたらごめん。ただ俺ちょっと…」
「聞けよー?」
言いかけた将哉の言葉を、担任が遮って連絡を始めた。
成長が遅いのは自覚している。そして多分もう成長期が来ないだろうことも。
言いかけた言葉は気になるが、言い訳とかなら聞きたくない。
制服を着ていても小学生に間違われる俺には、弁解の言葉なんていらない。
どうせ俺の容姿が原因なんだ。
「さっきはごめん。あのさ、俺実は…」
「いいよべつに…」
「ちっちゃいもの好きなんだ…!それでその…最初会った時は奈津座ってたし気づけなかったんだけど、奈津が席立った瞬間にそのサイズ感にキュンときちゃったというか…」
「…は?」
将哉は恥ずかしそうに頬を両手で覆った。
俺は顔の良い奴を初めてキモいと思った。
「ちっちゃいって素晴らしいな、って思うんだよね!その中でも奈津はちょうどいい大きさって感じで…あー、いいっ!」
すごく気持ち悪い…、本物の変態を見た気がする。
これから前後の席でやっていける自信がない…。
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