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それからというもの、将哉はおれを異常なまでに溺愛した。
「今日も可愛いね、奈津!朝目覚める時に、奈津の身長が伸びてたらどうしようって、心配してたんだ…!そのままでいてくれてありがとう!」
「…。」
クラスメートや、他のクラスの奴らからも同情というか哀れみみたいな眼差しを受ける。
今では、俺達に対して“ホモ”とまで言う奴も出てきた。
「奈津ー奈津ー♪」
コイツには何を言っても無駄だ。
そして俺は、毎日ウザいくらい絡んでくる将哉を無視し続けた。
その間に席替えもあって、将哉とは席がかなり離れた。
それでもアイツは笑顔で話しかけてきた。
無視をし続ける俺に、周りは、喧嘩でもしたのかと尋ねてくる。
ただちょっとくどいのだ。
あんな、容姿をとやかく言い、勝手に萌えている奴なんて大っ嫌いだ。
ある日のこと。
「奈津!俺、彼女ができたんだ!」
「は…?」
「あ、やっと反応してくれた!」
「釣ったつもり…?」
「ううん、彼女できたのはホントだから」
身長差もそうだが、見下されている感じがしてムカついた。
何もかもがムカつく。
容姿端麗、身長充分、明るくて笑顔で、スポーツ万能。何もかもが俺を上回っているのだ。
「そうか。じゃあ俺に話しかけなくてもよくなったってことだね。彼女とずっと喋ってなよ。彼女の身長にハァハァ言っとけば?」
「うーん…彼女はそんなにちっちゃくないんだよね」
負け惜しみのように、スラスラと口をついて出た厭味も、将哉にとってはただの会話の一部らしい。
しかし意外だ、愛する恋人がちっちゃいもの属性じゃないなんて。
結局ちっちゃいもの好きのレベルもそんなものなのか。
「あっそ。どちらにしろ俺には関係ないし。お幸せにー」
「…寂しいとか思ってくれないの?」
「思わないよ。むしろ静かになってくれて嬉しいくらい」
将哉は悲しそうな目をした。
苛立ちに任せて、少し言いすぎただろうか。
傷つけてしまったのか。
「そうだね、ごめんね。奈津には迷惑でしかなかったね…」
泣きそうな顔で笑って将哉は背を向けて走り出した。
追いかけるなんて律儀なことはせずに、ただぼんやりとその様子を眺めていた。
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