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それからというもの、将哉は話しかけてこなくなった。 そんなある日の放課後、弁当箱を教室に置いてきたことに気づいて教室に戻った。 『知らねぇよ!大体お前も彼女面すんな。カムフラージュだっつったろ?』 『デートくらいしてくれてもいいじゃん!』 うちの教室でカップルが揉めている。 これでは教室に入れないじゃないか。 『しかもカムフラージュって…そんな奴が女と付き合うとかおかしいよ!このホモ野郎!』 彼女の方が泣きながら出てきた。 そうすると廊下で鉢合わせするわけで。 「…橋本…奈津くん…?」 「え?あ、はい…」 「もしかして…聞いてた…?」 「…すみません」 怒られるんじゃないかとビクついていたが、意外にもその怒りはこっちには来なかった。 「松浦ぁ!!せいぜいフラれろ!ショタコンがっ!」 ふんっ、と言いそうなくらいの勢いで彼女の方は去っていった。 それよりもだ。松浦といえば… 「将哉…?」 「奈津!?」 つまりさっきの子は将哉の彼女だったというわけか。 「さっき怒鳴ってたのも将哉なの?」 「うん…ごめん。奈津の前では猫被ってた。普段はあんな感じなんだよ」 ニコニコ、ヘラヘラ、ふわふわした感じのイメージが一気に変わった。 「ていうか…聞かれてた?」 「まぁちょっとは…」 「じゃあ俺が奈津を好きなのもばれちゃったか…」 「…へ?それは知らない」 「うそ!?」 口を手で覆って、後ずさりをした将哉は顔を真っ赤にしていた。 さらっと出てしまった告白に、ドキドキはほとんどなかった。 「彼女さんが言ってた“ホモ野郎”とか“ショタコン”って本当だったんだ…」 「やめて!掘り返さないでっ」 恥ずかしさからか、将哉がその場にしゃがみ込む。 「俺のことが好きってほんと…?」 「うん。マジでタイプど真ん中で…。全力でアタックしたけど通じてなかったか…」 自嘲気味に笑う将哉からは緊張が伝わった。 きっと本気なんだ。 「外見が全てだって思ってる人は大っ嫌いだよ」 「フラれても俺は奈津にアタックし続けるよ。周りの人が目に入らないくらい好きなんだ…」 夕暮れの教室で告白されるなんて漫画かよ、とか思ったけど、男に告白されている時点でホモ漫画決定だ。 高校生活ではもっと少女マンガみたいなキュンキュンする恋愛があって、部活では少年マンガみたいなスポ根を期待していたのに、この男が夢をぶち壊したのだ。
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