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「一緒に旅行に行かない?」
俺は意を決して誘ってみた。
相手は可愛い…男の子だ。
幼なじみだし、クラスメートとして仲良くもさせてもらっている。
俺はそんな梓のことが好きだ。
だから今回の旅行で心の距離を縮められたらな、と思っている。
彼の答えはこうだった。
「え?家族で?」
そういう天然なところも好きなのだけれど、こちらは緊張しているのだから、そういう出鼻をくじくようなことをされると困る。
「二人でだよ。たまには良くない?」
「うん、どこに?」
「従兄弟が京都で宿やっててさ、安く済みそうだし、京都に行こうと思ってる」
「へぇー、いつ行くの?」
「梓に合わせるよ」
あとは予定が合うだけだ。
順調にことが進んでいる。
「次の連休なら空いてると思うけど」
「マジで!?じゃあ連休で行こう!!」
連休ということは三日間一緒に居られるという最高のシチュエーションではないか!!
俺は異常なほど舞い上がっていた。
ちゃんと従兄弟には連絡をしておいた。
そして遂に京都へ二人で来たのだった。
「おー、よう来はったなぁ!」
「圭ちゃん、久しぶり!」
圭ちゃんというのが泊まる宿の経営者で、俺の従兄だ。
「お?その子が一緒に泊まる“可愛い子”なん?男の子やんか!」
圭ちゃんが驚くのも無理はない。
俺が、まるで彼女を連れていくみたいな口ぶりをしたからだ。
「あかん…気ぃ利かせて布団一式しか用意してへん…!」
「マジで!?」
「嘘でしょ…?」
彼も驚愕している。
嫌ですよね、ええ。俺と一つの布団で寝るなんて。
「宿中探せば、布団くらいあんだろ!?」
「勿論あるけど…、可愛い子って…いや、可愛い子やけどな、勘違いするやんかぁ。もう面倒やから二人で寝てくれへん?どうせお前あの子のこと好k…」
「それ以上はヤメロ…!」
圭ちゃんの口を塞いで梓の方を振り向く。
つまらなくなったのか、幸い、飛んでいる蝶々を追いかけている。
「なんや、図星かいな?」
「ちがう…これから気まずくなるのが嫌なんだよっ!!」
「いーや、俺には分かるで?絶対お前はあの子のことが好きや!」
自信たっぷりな圭ちゃんにこれ以上の嘘は不必要だと思って、梓には聞こえないように圭ちゃんに打ち明けた。
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