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「そうだよ、好きだよ。この旅行で勝負したいんだ。あんまりお節介やかないでくれないか?変に意識されたら困るし」
「ほぅ…まぁわかったわ。すぐ布団持って行ったるから」
圭ちゃんは俺の肩を叩いた。
「ほな、お部屋に案内するで、ついて来てな?」
梓も鞄を持ってついて来た。
完全に一人にしてしまっていた。
俺としたことが早速ミスが出た。
部屋は純和風。まぁよくある旅館だ。
梓は部屋を見回すと、お茶をいれようとポットに手をかけた。
「お茶飲む?」
「あ、おれはいいy…」
「いただいてもええんですか?いやー優しいお客さんで嬉しいですわー!」
「え…?」
「圭ちゃん…!!」
空気が読めていない圭ちゃんに梓も唖然としている。…当たり前だ。
「嘘やって!すぐ布団持って来たるから、しばらく二人でしっぽりしとってな」
「しっぽりってなんだよっ!」
ゲスい笑みを浮かべる圭ちゃんを外に押し出して、梓に苦笑いを見せる。
「昔っからああなんだよ」
「仲、良いんだね」
「んー、まあ歳近いしな」
「そっか…」と呟くように返事をした梓の表情は寂しそうに見えた。
まぁ俺の都合のよい解釈なのかもしれないが。
「もしかして嫉妬してくれてる?」
「はぁ!?」
冗談っぽく言うと、梓は顔を赤くしている。
…もしかしたら脈ありなんじゃ…。
そう思ったら、ずっと言わないでおいた気持ちを言ってしまった。
「好きなんだ、お前が…。付き合いたいとも思ってる…」
勢いで言い出した告白の言葉は、梓のキョトンとした顔を見て尻窄まりになった。
「キモいとか思ったら帰ってもいいし、宿、別の部屋用意してもらうし…」
「嬉しい…!やっと言ってくれて…」
下を向いている間に、俺の前に移動していたらしい梓が、俺の膝に置かれていた手を握ってきた。
「ずっと気づいてたよ。今回の旅行で告白してくれなかったら、僕からするつもりだったんだよ?」
目の前でにっこりと微笑む梓にドキッとしてしまう。
これは夢だろうか。こんな都合よくいくはずない。
「僕も好き…」
目を閉じた梓は、きっとキスを求めている。
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