聖夜

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やってきた週末。 「うんっ、届かない――っ」 今日は朝からツリーの飾りつけ。 あと2週間もすればやってくるクリスマス。 大河内家の大きなリビングにはこれまた大きな本物のツリーが用意され、 その隣には数え切れないだけのオーナメント。 「無理だよ」 ひょいっと手から攫われたのは何故かピンク色のスノーマン。 そして恭の反対の肩には脚立がひっかけっられていて。 「離れて」 その声に一歩下がると、恭はその脚立をツリー脇に置いた。 「俺が上のほうは飾るから、シオは下の方を――」 「あたしも昇りたいっ!」 「いや、危ないから」 「やるっ!」 胸の前で力強く握られた拳。 キラキラと輝いている詩織の瞳。 だから恭は仕方なく薄く笑う。 「気をつけて、無理はしちゃダメだよ」 そんな声を聞きながら詩織は脚立を昇った。
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