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クリスマス。
必要なのはツリーと――。
「美紀ちゃんを買い物だっけ?」
恭のその声に詩織は「うん」と頷いてバッグをソファにトンッと置いた。
上品なワンピースに身を包み、上等なブーツで床を鳴らす。
ネックレスは勿論本物のブルーダイヤにお揃いの指輪を右手に。
どこからどう見ても『お嬢様』
その姿に恭はふわりと笑い真っ白なカシミアのコートを詩織にかけた。
「あまり無駄遣いしないようにね? あと帰りが遅くなるときは電話して。それと――」
「大丈夫っ! 無駄遣いもしないし、遅くもならないってば!」
詩織がそう叫んで口を尖らせると恭はすこし困ったように笑って、
「寒いから気をつけて」
と言って、ファーマフラーを詩織の首に巻いた。
「……ありがと」
その声に「どういたしまして」と恭は微笑む。
ガチャリとリビングのドアが開けられて。
「詩織お嬢様、美紀様がいらっしゃいました」
鈴花の声に「はーい」と答えてバッグを持って。
「いいですか? 無駄遣いは控えてください。それから遅くなるときは――」
「もう聞いたったら!」
叫ぶ詩織に鈴花は目を丸くして、
そして恭は、
「あははっ、いってらっしゃい、シオ」
そう言って笑った。
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