369人が本棚に入れています
本棚に追加
「お待たせ」
そう言って天使の人形が取り付けられた車に乗り込む。
「で、どこ行きたいの?」
美紀の声に「うーん」と唸って、
「やっぱりエルメス、かな?」
なんて声に「はいはい」と返して美紀は運転手に指示を出した。
店先に車を着ければ、外からドアは開けられる。
「糸井様、大河内様ようこそいらっしゃいました」
どう見て詩織や美紀よりも20以上年上の店員が恭しく頭を下げる。
けれどこれがいつもの光景で、二人は勧められるまま店内に足を運んだ。
「今日はどういったものをお探しで?」
少し若い女性店員の声に詩織は店内を見渡しながら「あのね」と説明を。
「キーホルダーが欲しいの」
「キーホルダー、ですか?」
繰り返すその声に詩織は「そう」と首を振る。
「鍵が付けれるなら何でもいいんだけど……、あっ! 兄にプレゼントだから男性モノをね」
「それではこちらはどうでしょう?」
引き出しから出されたのはキーケース。
「こちらはコインケースとお揃いもございますし、なんでしたらネクタイも」
「そんなに歳じゃないってば」と言いながら唸る詩織を横目に美紀は店内を物色中。
「あ、このバッグ見せて」
「かしこまりました」
なんて声が店内で繰り返された。
最初のコメントを投稿しよう!