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楽しい楽しい冬休み。
その前にあるのが――。
「テストってなんで必要なんだろう? うちはどうせエスカレーター式に上がれるんだから必要ないよね?」
「よほどの馬鹿じゃ無かったらね」
美紀の声に詩織は唇を尖らせて。
「っつーか、一番酷いのが数学って言うのが納得いかねぇ」
彬は憮然としながらコーヒーを啜る。
「……きっと教え方が悪いんだと」
「あぁ!?」
「……すみません」
ここは数学準備室。
応接セットにはいつもの二人。
テーブルには紅茶と、数学の教科書。
「本当に恭さんと血の繋がった兄妹なら問題なかったのにね」
恭はいつも学年のTOP5に入るほどの成績だから。
「全くだ。そうなれば何の問題も無かったのになぁ?」
勝手に展開される会話に唇を尖らせながら、数字をシャーペンの先でなぞっていく。
「いいからこれ教えてよ!」
「それが人にモノを頼む態度か?」
「先生の仕事でしょ」
「そこは間違えてないわ」
美紀の声に彬も顔を歪めて。
次の瞬間ニヤリ と笑う。
「まっ、出来の悪い子ほど可愛いって言うしな」
なんて声に美紀一人だけ大笑いした。
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